爆裂BOX

ルームズ・フォー・ツーリストの爆裂BOXのレビュー・感想・評価

4.0
ブエノスアイレスを訪れた5人の少女。列車を乗り過ごし、名も知らぬ街で一晩過ごすことになった彼女たちは、住人の好意で泊めてもらった部屋の地下室であるものを発見するが…というストーリー。
「ニトロ」のアドリアン・ガルシア・ボグリアーノ監督の長編デビュー作です。製作始めたのが何と19歳の時でそこから4年かけて完成させたというから驚きですね。
偶々バスで乗り合わせた5人の少女が名も知らぬ街で一夜の宿を借りるも、泊めてもらったホステルで謎の覆面殺人鬼に襲われるという「悪魔のいけにえ」のような田舎スラッシャーといった内容ですが、全編モノクロの陰影の効いた映像が不気味で不穏な雰囲気生み出し、惨劇が起きるまでの前半のドラマ部分も割と飽きにくい作りになっていると思います。電気が消えてライターの明かりだけで進む所の暗闇演出もゾクリときました。ショットガン喰らって破裂する扉をスローで捉えたショットもセンス感じさせます。
5人の少女達も主役のテーダのメンヘラな感じや彼女に親身なエレナ、事が始まってからずーっと怯えまくってる金髪ショートのルースとそれなりにキャラ立ってたんじゃないでしょうか。個人的には眉ピアスのリディアが殺人鬼殴り飛ばしたり、トラップのナタを素手で受け止めてから引き抜いたりとタフな感じが良かったです。主にルースの危機救ってましたね。
最初の犠牲者が出てからは彼女たちが悲鳴上げながらホステル内を逃げ惑う展開が続きますが、彼女たちのスクリーミング具合や恐怖の表情も良かったですし、その中で彼女たちが抱えるウラ事情やこの事件の概要が巧みに仄めかされていく演出もストーリーへの興味を持続させます。
ゴア描写はそこまで多くはないですが、ナタや肉切り包丁で切り裂かれる皮膚や切断される腕、腹の裂け目から内臓が溢れ出てくるショットが妙に生々しく描かれてます。首切り化された時のゴボゴボ言う音も妙に耳に残りますね。個人的には手に食い込んだナタを引っこ抜く所が痛々しかった。
マスク殺人鬼はキャラとしては弱いですが、視界が凄い悪そうなピチピチのマスクのせいでヒロイン追い掛けてるときに排水管に頭ぶつけて気絶したり、上半身裸だけどそこまで引き締まった身体じゃなくちょっとお腹辺りたるんでる所おかしかったな。
そして何といってもファイナルガールたちのラストバトルと脱出した後、夜明けを迎えてから迎えるクライマックスのドンデン返しにはタマげました。無差別に旅行者が襲われるスラッシャーではなく、主人公達が集められて殺される理由もしっかり描かれるとは。冒頭の少女と犬を襲う惨劇もここで繋がってくる所等単純なスラッシャーに見えてしっかりシナリオ作られてるんだなぁと感心しました。そこからの主人公の機転を利かせた対処も見事でしたし、絶望的なラストのオチも良かったです。あの街だけじゃなく至る所に…
これがデビュー作というのが末恐ろしいですね。間違いなく秀作ホラーですが、レンタルで手軽に見る事が出来ないのが残念ですね。