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天使の入江の一人旅のレビュー・感想・評価

天使の入江(1963年製作の映画)
5.0
ジャック・ドゥミ監督作。

ギャンブルに嵌り込んでいく男女の愛の行方を描いた恋愛ドラマ。

ジャック・ドゥミ監督が長編第1作『ローラ』(61)に続いて撮り上げたキャリア初期の傑作で、南仏のニースやモンテカルロを主な舞台にして、カジノのルーレットに夢中になっていく銀行員の青年と賭けが原因で離婚歴のある女の邂逅と愛情の行方を見つめています。

ギャンブルに依存する人々の姿を目の当たりにして衝撃を受けたドゥミ監督の目撃体験に着想を得た作品で、賭けの魔力に憑りつかれてしまった男女がルーレットで大儲け→すっからかん→大儲け→すっからかん…とルーレットの玉が止まる数字に面白いように翻弄されていく様子と、ギャンブル依存からどうしても抜け出せないヒロインと彼女を救うべく働きかける青年の愛の行方を描いています。

幸以上に不幸をもたらしかねないギャンブルの魔力に憑りつかれた男女の破滅寸前の危ういギャンブル生活をリアルに描いて、やはり“堅実で節度ある人生を歩むことが大切”であることを教訓として教えてくれる作品で、せっかく大儲けしても贅沢三昧で散財しては再びカジノに足を運ぶを繰り返していく男女の不安定な生き様には一種の恐怖を覚えてしまいます。

ルーレットの玉が回る様子を的確に表現したミシェル・ルグランのテーマ曲や冒頭の疾走感あるカメラワーク等、洗練された音楽&映像テクニックが大変素晴らしいですし、ルーレットに情熱を注ぐヒロインを演じたジャンヌ・モローの破滅的立ち回りも見事であります。

蛇足1)
エンドクレジットでは助監督にコスタ=ガヴラスの名前を見つけることができます。
蛇足2)
ニースで青年が泊まるホテルの名は「ミモザ・ホテル」ですが、これは本作と同じく南仏を舞台にルーレットの魔力に憑りつかれた人間を描いたジャック・フェデー監督『ミモザ館』(34)に因んでいます。
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