一人旅

ポトフ 美食家と料理人の一人旅のレビュー・感想・評価

ポトフ 美食家と料理人(2023年製作の映画)
4.0
トラン・アン・ユン監督作。

スイスの作家:マルセル・ルーフによる1924年発表の小説をトラン・アン・ユン監督が映像化したもので、食を通じた男女の愛を静かに見つめた愛すべき佳作です。

19世紀末のフランスの田舎を舞台に、美食家:ドダンと住み込みの料理人:ウージェニーの関わりを描いた作品で、二人三脚で生み出す極上の料理で美食界の名の知れた存在となっている二人の食を通じた絆と愛情を浮かび上がらせていきます。

『バベットの晩餐会』(1987)の温かみある素朴な料理というよりも、どちらかというと『恋人たちの食卓』(1994)を彷彿させる彩り豊かな豪華料理の数々がその調理過程を含めて映し出される“美食+恋愛ドラマ”となっていて、美食家と料理人の労使関係を超越した男女の愛を主軸にしつつも、それと同等に丹念な調理場面に尺が割かれています。食材の下準備から描く繊細&丁寧な調理描写が登場人物から語られる料理の蘊蓄を交えて映し出されていますし、料理そのものだけでなく、料理の頂き方に関する独特の作法も興味津々に描写されています。

食を通じた男女の固い絆と生きる気力の回復を観客の目を引く多彩な料理シーンと自然な光彩&ゆとりある厨房空間がもたらす静謐な映像美と共に描いた美食ドラマの佳作で、天才料理人:ジュリエット・ビノシュ&美食家:ブノワ・マジメルのフランスのベテラン二人が円熟の演技を披露しています。
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