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マルコヴィッチの穴のyokoのレビュー・感想・評価

マルコヴィッチの穴(1999年製作の映画)
4.8
まず、マルコヴィッチの人選が絶妙。有名すぎず無名すぎず、格式があって舞台も似合う。ユニークなのに安いコントっぽくならないのは彼の力量だろう。あと名前の響きのマルコヴィッチ。日本人からすると声に出して読みたい名前系だと思うが、ネイティブからしてもそうなんだなと思った。

1999年は映画のあたり年らしく今作だけでなくマトリックスや、ファイトクラブなどがあり作品としての名作というのは言わずもがなだが、それ以前以後として世界が分けられるような作品が多い印象。

自分ではない誰かになれるだけ、ならあるだろう。今作はマルコヴィッチだけwなのにマルコヴィッチに15分間なれるその商売は繁盛する。有名人というのを抜かせばハゲたおっさんなのに。なれると言ってもコントロールできるのは主人公くらいで、操作的な快楽とは少し違う。

提示されるテーマは世界は一つではないということ。キャメロンがエスキモーの雪の種類を表す単語は49つある話を持ちだすが、ようは同じ景色に身を置いたとて人によって世界の見え方が全然違う。世界は一つではないと気づいてしまう装置がマルコヴィッチ。だからおじさんのなかに入って中毒になる。おじさんになりたいのではなく、マルコヴィッチというフィルターを通して、世界の可能性、情報がまったく違う刺激で入ってくる快楽。

これが20年前にsns,やアバター、仮想現実が整備されるまえに公開されたのがすごい。

良い女を、キャサリンキーナー。ダサい女をキャメロンにするチョイスもよい。ただキャメロンがシャワーを浴びてバスローブ一枚になるとブスメイクできなくなってただの美人になってしまうのは悪手。最後はレズカップルになるのだがこの辺も新しい。レズだからどう的な説明がないのもよい。ただ自然にくっつく感じ。

人形というのはあなたも文字通り操り人形かもよ〜という皮肉もあるが、シンプルに無表情な人形も演出次第で私達は勝手に表情を読み取る。表情は一つなのに解釈の可能性をかけているように感じる。

マルコモードで人形師として評価される。し人形師の腕はもともとだ、世間はマルコヴィッチだから評価した。同じ才能でも評価は違う。世界は一つではない。

7 1/2はおそらく8 1/2から思いついたと思う。見返してみたら低い天井というセリフはあったがどうかなあ。関係ないか。

rem のマイケルスタイプ(若干マルコヴィッチ系の頭皮)も制作に参加していたのがツボ。
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