このレビューはネタバレを含みます
「あなたは 父を感じさせる人」
「彼は死んだ」
「私は生きてる」
幼い頃に与えられきれなかった父性の延長を年の離れた男たちとの接触に求めるマリケ。決して本当に求めるそれにたどり着けない欲求は複数の男たちとの関係という歪んだ現実を彼女に与える。
父をたどった先で出会った、父ののこした物たち。父の友人と共に開いたその鞄の中には自分の知らなかった真実があった。己が幼い頃に出て言ったきりだと聞かされていた父親の真実。永遠のラビリンス、存在すると思っていた出口は閉ざされていた。ぐるぐる、ぐるぐると巡り続ける心。
天使たちの手で作り出される甘いチョコレート菓子、その手で触れる皺の寄った男たちの肌。母と向かい合って歌を口ずさみながら過ごした幼少の浴室、ぷかぷか、ぷかぷかと浮かぶプール。
・切ない静けさ
・チョコレートをコーヒーと食べたい
「写真は趣味じゃない ないと死ぬの」
「母は愛が足りないの」
「いや 愛しすぎたんだ」
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ああ マリーク 愛しき君と共に
ブルッヘとヘントの塔の狭間に暮らした
ああ マリーク 懐かしき夫よ
ブルッヘとヘントの塔の狭間に暮らした
二人の愛は冷め風が無言でそよぐ
散りゆく愛に 海が涙を流し
終わった愛に 光が闇で苦しむ
我がフランダースの地を砂が吹き荒れる
ああ マリーク フランダースの空が
ブルッヘとヘントの塔の狭間にそよぐ
二人の愛は冷め風が終わりを告げる
散りゆく愛に 海が涙を流し
終わった愛に 光が終焉を悟る
我がフランダースの地を砂が吹き荒れる
ああ マリーク フランダースの空よ
ブルッヘとヘントで泣いておくれ