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ストーミー・ウェザーのあのレビュー・感想・評価

ストーミー・ウェザー(1943年製作の映画)
4.1
stormy weatherとは言うけれど、初夏の五月雨が降る日に何も考えず観ていたらどんなによかったか、と思うほど穏やかでさりげない映画でした。

例によってミュージカルということで、お話はスカッスカなんですが、贅沢なキャスティングとしっとりとしていながらキレもある演出が全くこちらを飽きさせませんでした。

途中脚が扇風機みたいに動くヤベェ二人組が出てきて度肝を抜かれましたが、あの方々が皆様が言うニコラス・ブラザーズなんですね。最近だとブルー・スリーや坂東妻三郎にも思いましたが、四肢が飛んでいかないか心配になりました。剥きたてのズワイガニみたいに。

個人的には、ニコラス・ブラザーズも良かったのですが、ファッツ・ウォーラーのしっとりした演奏や、雨の軒下を覗かせる窓辺でレナ・ホーンが「stormy whether」を歌い、それが終わるとひらめくカーテンを超えて嵐のようなミュージカルに突入し、また窓辺に帰ってくるところの緩急が、まさに強まっては弱まるstormy whether、ひいては内容が薄い物語はずの物語の稜線をぼんやりと浮き上がらせていてたまらなくよかったと思いました。

黒人オールキャストという特性を全面に押し出す必要がないほど、作品そのものが持つポテンシャルが高かった印象です。主義が先走りしないマイノリティたちの娯楽ほど見ていて楽しいものはないと改めて思いました。
あ