クマヒロ

借りぐらしのアリエッティのクマヒロのレビュー・感想・評価

借りぐらしのアリエッティ(2010年製作の映画)
3.4
『共生とは』

人とは違う生物にスポットを当て、共生について考えさせられる本作『借り暮らしのアリエッティ』

コオロギ程の大きさの小人達。借りぐらしの生活を覗くことで、人間が普段見ない世界を見せてくれる。小人達ならではの生活描写が本作のアニメーション表現のキモ。一滴ずつ出る珈琲や、両面テープの使い方等、とにかく楽しい表現に溢れている。

「君たちは滅びゆく一族なんだよ」
翔が放つ突然の台詞に唖然とさせられるが、他生物を思いやらない人間の身勝手さが強調され、テーマ性には則している。
ハルさんを始め、現代を生きるわれわれにとって、他を蹴落とし、目先の欲求に捉われるのが当たり前になっているのかもしれない。借りぐらしの生活を壊す翔やハルさんの行動は宮崎駿さんが言うように現代をメタ的に表現している。

しかし、ラストの場面で感情移入しづらい。とにかく翔も身勝手で恐ろしかったために、別れるしかない辛さ・切なさ、異生物間の和解と言うより、別れを後押しする気持ちが勝ってしまう。
ラストにテーマ性がぼやけてしまうところが作品ごとに一貫したテーマを持つスタジオジブリらしくない。

兎にも角にも、アニメーション表現や扱おうとしたテーマの重大さ、音楽の美しさは担保された一級の作品だった。
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