はせ

イノセンスのはせのネタバレレビュー・内容・結末

イノセンス(2004年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

押井守の常軌を逸した知識量に脱帽!
今にして思うと、かつてこの作品を小学生の僕が観たのは鈴木敏夫プロデューサー懸命の宣伝努力の結果だったのだろうか。アニメ映画ならなんでも観ていたのだが、劇場に足を運んだ多くの人と同じようにポカンと口を開けていた。ただ、退廃的な近未来世界観と不気味な人形のビジュアルイメージは幼い僕の脳裏に焼きついていた。大々的な宣伝と押井守の作家性が炸裂している本編が噛み合っていなかったのかもしれないが、10年以上経った今だからこそ楽しめる作品だった。

少佐の失踪後、くたびれたバトーを主人公に刑事モノとしてストーリーが展開していく。バトーはハードボイルドで力強く、想い人の素子に対しては紳士な面もあって、寂しげな雰囲気もある魅力的な主人公だった。
自意識を持たないもの(人形、犬、子ども)こそがイノセントで素晴らしいとの結論だが、人が子を欲したりペットを飼ったり人を模して人形を作ったりする理由は寂しさを埋めることだけではなく、その純粋さを愛でたいからということだろうか。犬や人形と子どもをある意味同列に捉えるのはちょっとビックリだが、押井守は子どもがいるそうだ。子どもの成長につれて形成されていく自意識を、純粋さが失われていくように感じたのかな。僕も子どもを持てばわかるかもしれない。
バトーと素子の関係に悶々とした。素子は人を超えた上位存在になってしまったので個としては側にいてくれない。でもネットに接続すればいつでも側にいるよと言ってくれる…ウ~ン切ない。「お前は今幸福か?」という問いも、「幸福なんて懐かしい概念だわ」とバッサリ。「お前は今幸福か?(お前が幸せでさえあるならそれでいいさ)」ってことでしょ!泣けるよバトーさん。

"備考欄に感想を書くタイプ"の技術屋のおばさんのシーン、榊原良子の声が耳障り良くて気持ちよかった…。このシーンは必見!
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