人はなぜ不毛なことに全力になるのか
私は中学の時に恋に落ちた。
クラスの一番人気の女子の浅倉は土日に東京に行ったことをノルマのように自慢してくる。
クラスの男子はみんな浅倉に夢中だった。モテる理由として浅倉の顔には花があるからだ。
しかし私はこんなTVに影響されまくった汚れた女に魅力を感じるほど低脳ではない。
私が魅力的に感じたのは隣の机のガリ勉女とアダ名で言われている鈴木さんだった。
聞いた話だと鈴木さんはどっかの塾の全国テストで9位だったようだ。
なぜこのような住む世界が違う女性に恋い焦がれたのか それはあまりにも運命的で まるでタイタニックのようにドラマチックな恋の始まり方だった。
数学の授業中に私は消しゴムを落とし、自分のどんくささに呆れていると今までの顔をろくに見たこともない鈴木さんが消しゴムを拾ってくださり、聖母のように優しく渡したのだ。
それがきっかけである。
それからはどうにか鈴木さんとの会話を広げるべく考えてみたが彼女の趣味なんてまったく知らない。
そもそも私は鈴木さんと会話したことがないのだ。
知ってることといえば 彼女は友達とよく きらりん☆レボリューション とゆう月間少女漫画 ちゃお に掲載されていた漫画の話をしていたことだ。
しかし私は少女漫画なんて見たこともないし、見るつもりもない。日本男子が少女漫画なんか見るわけがない。
私は本屋にいる。手には ちゃお を持っていた。もはや なりふり構っていられない。わたしは栄光ある敗北を選ぶ。
しかし足が動かない。店員が怖かったのだ。気持ち悪いと思われるのが恐かったのだ。
全身から汗を出し、40分ちゃお を持って動けずにいた。その時鈴木さんの顔を思い出し、勇気を出しレジに向かった。
おそらく寿命が40年縮んだ。しかし買ってしまえばこっちのものだ。家に帰りきらりん☆レボリューションを見た。
次の日鈴木さんに「今月のきらりん☆レボリューション面白かったね」と紳士のように話しかけた。
完璧だ
鈴木さんとのレインボーロードが待っている
鈴木さんが口を開き一言
「そう(SAW)」
鈴木さんとの会話は2度となかった