ストレートなメロドラマだが、素晴らしい俳優陣と辛めのストーリー展開で、時代を超え今でも見ることが出来る作品。
監督としての才能もある佐分利の控えた演技や、若すぎて齢を重ねた時の渋さはないが、元気いっぱい、おまけにスターオーラをまとった三船はさすがだ。
原節子もこの時代の「美人」と言える個性的な女優。
そして、映画中のキャラとマッチして、ボーイッシュな仮装まで見せてくれた八千草薫はお宝映像と言っていいぐらいの輝き。
お婆さんになっても品を保っていた素晴らしい女優の一番輝いていた時期で、ファンでなくても必見の映像と言えるだろう。
ストーリーはさすがに暗さがあるものの、辛口の落としどころや、前記の八千草の必要以上に出しゃばらないキャラクターの良さで、脚本の良さが伺える。
また、戦後のかなりリアルな描写なども見どころだろう。
邦画としては珍しい「時代を超えた」作品と言える。