甲冑

不貞の女の甲冑のレビュー・感想・評価

不貞の女(1968年製作の映画)
4.5
シャブロル三角関係ものの中でも最も削ぎ落としてある部類ではないかと。しかしシンプルなだけに科白、演出、カメラワークが際立つ。冒頭と最後は同じ家族のいる庭で整えてあり、男の気持ちが最初から最後まで変わっていなかった事を強調する。男は妻の浮気により自分がちっぽけな幸福に捉われている事を自覚するとともにそこに人生の安定を見出し、不安定になるやいなや自分自身が不安定な領域に強行し安定を戻そうと躍起になる。終わらせ方がまた上手い。カメラは後退していくのに、妻子の方にズームしていく。身体はサツに連行されていくのに心は妻子を求め続けるという事だが、客観描写を散々続けてきたカメラがここだけは主観になるのには気持ちが揺さぶられる。ピンボケ気味になるのも切ない。
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