不貞の女の作品情報・感想・評価

「不貞の女」に投稿された感想・評価

予期せぬ妻の不倫に気づいた時、平凡な夫の心はどのように動き、どのように行動していくのかを、淡々とドキュメンタリーのように追いかける不倫シミュレーション映画。妻の不倫の原因を最後まで夫は訪ねようとせず、観客に説明されることもない。

本作はシャブロル監督の全作品の中でも、翌年の「肉屋」(1969)と並んでトップの人気作だと思われる。その主たる理由はラストカットの魅力に尽きるだろう。シミュレーションの終わりを飾る、夫目線のドリーバック&ズームイン。得体のしれない不安に襲われる、その魅力は何なのか?今のところは理論立てて言語化できない。

今作について、監督は素っ気なく「妻・オードランを美しくみせるためにだけ撮った映画」と語っている。

※浮気相手を演ずるのは「鬼火」(1963)の悩める主人公役モーリス・ロネ。
くるみ

くるみの感想・評価

4.8
古典的かつシンプルなストーリーに、シャブロルの職人的演出が加わった見応えのあるサスペンス。一見円満なブルジョワ一家の主人が妻の浮気を疑うようになる所から始まるのだけど、謎や事件に迫るものではなく、シャブロル独特のねちっこい目線で人物の心理を描く事に比重を置いているのが特徴。
夫婦互いに疑惑と秘密を持ちながら、問い詰める事も出来ず腹を探り合うぴりぴり…からの流れとエンディングがスゴイ。説明的シーンが少ない分、観るたびに小物やセリフをヒントに背景を深掘れるし本当に面白くてお気に入り。
sleepy

sleepyの感想・評価

4.6
映画がFinを迎えても ****





原題:La Femme Infidèle, 英題:Unfaithful Wife, 1968年、仏=伊、カラー、98分、クロード・シャブロル監督。

うますぎる。でも瑞々しい。表現手法に意味がある。役者が語らずカメラが語る。セリフが映画を前に進めず、感情を語らず、行動が映画を進め、心理を匂わせる。妻の不貞を確信した中年男シャルル(ブーケ)は妻エレーヌ(オードラン)の不倫相手(ネロ)に会いに行くが、これが思わぬところへ夫婦を運ぶ。

こういった犯罪ものでは、いかに犯行・犯人が露呈するか、というスリルや(1か所そういうところがあるが。シャブロルはこれをやらせてもうまい)、人間描写とは無縁の単なるエキセントリックさや、安易なサプライズに重きを置き勝ち。本作では、彼ら彼女らが次に何をするか、どう振る舞うか、リアクションするか、が息苦しいサスペンスを生んでいる。

この映画のキーワードの1つが「秘密」だ。仮面夫婦はミッシング・ピースという「秘密」を2人それぞれ持っている(2人の間の男の子がジグソーパズルをやっているのが印象的だ。「ピースが足りない。パパ、隠してるでしょ」、と怒るシーンは監督が意識して描いたエピソードと思う)。

そして芝居のさりげなさにも唸る。そしてたいていこちらの予想を裏切る。いたたまれなさ、抑圧された情けない(しかし最後は違った)夫役のミシェル・ブーケは、「不貞の女」という題名にもかかわらず本作の肝と思う。平静を装う小市民的な男の爆発と想いの深さ。

そして妻のオードランの女心の変遷と芯の強さ。2人とも素晴らしい。情事の相手のネロは出番は少ないが、監督の意地悪を体現する役廻りだろう。子役も刑事も自然だ。

ネガティヴなラストとみるかポジティヴなラストとみるか、分かれるだろう。個人的には後者。静かな画面の裏に、皆の瞳に、背中に歪んだ情念が流れている。見えないが確かに存在が感じられる。しかしラスト10分はいわば仮面夫婦だった2人が、真に感情を通わせる。ここでも感情はセリフでは語られず、行動と視線が、表情が多くを語っている。

ブルジョア家庭の危うさへの皮肉を扱うが、この部分には、お得意の「登場人物への意地悪」は感じなかった。これは夫婦の破滅・終焉なのか。いつも登場人物を翻弄する監督だが、最後では2人を見る視線に珍しく温かみさえ感じた。先にミッシング・ピースのことを書いたが、真情という、隠していたピースを差し出したこのシーンは、夫婦というジグソーパズルが完成した場面でもあるのだろう。

しかし殺人を契機に仮面をはずした夫婦の内面の移ろい、予期せぬ共犯関係と、急速に1つになる沈黙の絆というのは、観方を変えればやはり人心の歪みを描いた倒錯的展開とも言える。夫婦であるという共犯。ここに至り、それまでの画面の裏の情念がこちらに静かに流れ出し、陶然とさせられる。

監督の描くのは事件のミステリーではない。男と女が、夫婦が、人間がミステリーだと言っているようだ。シャブロルはトリュフォー、ゴダール、ロメールらと並んで、ヌーベルヴァーグから出発したかも知れないが、この頃から(?)別の道を選んだのかもしれない。人の負の情念の不可思議さに焦点を絞り始めた気もする。

不協和音を奏でる、ピエール・ジャンセンのピアノ中心の静謐なスコア。そして極限近くまでソリッドなジャン・ラビエの撮影、ともに良い(どちらもこの時期のシャブロルとの名トリオ)。華麗なるカメラワークではないが切り詰めたショットの処理には唸る。

シャブロルの他作品のように、極めて簡素な設定と、簡潔な語り口だ。矛盾する表現だが(いや、だからこそか)、濃密な映画だった。画面から注意をそらすことが難しい。映画テクの定石は知らないが、カットを割るべきところは割る、そうでないところは割らない。移動撮影やパンすべきところはする、そうすべきでないところではしない。こんなことを確信をもって撮っている気がする。「なんとなく」はない。シャブロルは自らホンも書く。わかっているのだろう。「ここはこうしないといけない」、と。

いかにシンプルに余白をもって撮るか。シャブロルは映画がFinを迎えても、なお懐に何かを隠し持っているようだ。

★オリジナルデータ
La Femme Infidèle, 英題:The Unfaithful Wife, 1968,FR=Italy, オリジナルアスペクト比(もちろん劇場上映時比を指す)1.66:1, 98min, Color(Eastmancolor), Mono, ネガ、ポジとも35mm
ファッションを含めてオードランがとても綺麗だけどトータル地味。サスペンスの基本要素だけで一本作りました的なプロットも面白いけど、トータルは地味。
ラストのドリーズームが見事。前半の家族での食事のシーンがもろ『PASSION』だが、そこよりも後半の映画の精神性がめちゃくちゃ濱口が影響を受けているシャブロルすぎる。話はよくある不倫譚だけどとても興味深かった。
SKE

SKEの感想・評価

4.0
恋のテレビジョン・エイジ。パズルが投げて壊されて、翌朝になって修復してるところ良い。誰か来るなと思ってたら誰か来たし、事故るなと思ってたら事故った。
sasha2022

sasha2022の感想・評価

4.3
ずっと見たくて、、配信とかないので円盤買いました!スリル満点の不倫サスペンス✨相手に自分のことを愛してるかを聞いちゃったら夫婦関係末期症状の法則💥

上流階級美人妻の不倫とそれを察した夫。探偵を雇って浮気相手を探して相手に会いに行くが、相手のなんとも無邪気というか無神経な反応に耐えられず事件を起こしてしまう話。ここまではやっぱりか!な展開でしたが、その後のシャルルとエレーヌの心理的緊迫状況の描写が見事でした🤯超ミニスカぶりっ子美人秘書がいい意味で緊迫の緩衝材になっていて妙!

エレーヌの涙をみてもしかしてこれは本気かもと思って切なくなった、、いい夫なんだけど嫉妬深いわりにセックスレスぎみ?で寂しくなって他の男に行っちゃったのかな。でもエレーヌのシャルルへの愛情の片鱗もちらほら見えるから微妙なエレーヌの感情を汲み取るのが難しかったけど最後の浮気相手の写真のシーンで確信に変わりました。

きちっと答えを出さずにいいところで終わって見てる側の想像に任せるあの時代のザ・フランス映画の終わり方でした!こういう終わり方も好きですよ✨
クロード・シャブロル監督作品。
ミシェル・ブーケ演じる保険会社の重役シャルルは、ステファーヌ・オードラン演じる妻のエレーヌの浮気を疑い、探偵を雇うが・・・という話。

シャブロルによくある、富裕層、そして不倫の話。説明的な要素は少ない、淡白な印象。

室内がソフトフォーカスで淡い。
事件のサスペンスというより夫婦関係のサスペンスを主題にしているよう。
会社の秘書が極端なほどにブリブリしている。

このレビューはネタバレを含みます

愛らしい幼い我が子、夫からも愛され、裕福で恵まれた生活を送りながらも、別の男と情事を重ねる女。
ストーリーにしてみたら、ほんとに良くあるなんて事の無い話なのかもしれない。
なのに、演出によって全く違った味わいになるんだと感心させられて。

そして、序盤から流れるサスペンス満点な音楽。幸せな家族の日常を描く様子には決して似つかわしくない曲調。
『肉屋』でも違和感ありありの音楽を作ったコンポーザーはシャブロル常連のピエール・ヤンセン。

ラスト30分ほどの冴え渡る演出、ほとんどセリフの無い中で何に気づいた、何を考えている、この後どうなってゆくのかを理解させてくれる。
夕べの食卓で響く子供の咀嚼音、欠けたパズルのワンピース、何度も訪れる刑事、燃えてゆく写真、夫からの激しくも静かな愛の告白、
そして、カメラは遠ざかってゆく。
菩薩

菩薩の感想・評価

4.0
ちっさいテレビとでっかいライターの縮尺バグに笑わんやつおんのか…?ただよく考えばそれがこの悲劇の夫婦の愛の大きさの齟齬を物語っている様な気もしてくるから悲しい。なんら説明がなくとも2人の表情を観ていればことの成り行きが想像出来るし、実際なる様にしかならない方向へ進んでいく。事件が起きて以降の後半がとにかく面白い、淡々作業見つめる系映画が好きな人は、必死に証拠隠滅に励夫の姿を優しい目で見守ってしまうだろうが、最後思いっきりお布団手で掴んどるやないか!一片のピースが欠けたパズル、それをブチ切れてぶちまけるオードランはキャシィ塚本みに溢れている。「愛してるかい?」に「愛してるわ」が返される頃にはもう遅い、遠ざかる夫、その視線の先には愛する妻と息子、段々とボヤけていく2人…切ない!!!
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