シーゲルの遺作、とはいってもこの後自ら映画から離れるのでこれが遺作になることを知って撮っているはず。飄々としたユーモアと死の緊張感が同時にあり、シーゲルの映画の中でも特に偏愛したい。ギャンブルという軽めの題材と楽観的な空気になんとなく巨匠の晩年にある雰囲気を感じるけど、編集の鋭さはまったく衰えてなくてとても遺作とは思えない。ベット・ミドラーは夫への情から結局は毒を入れられず、一方で全財産を失いながら気丈に振る舞うリップ・トーンがふとシャワー室の電球に手を伸ばす瞬間の高まっていく緊張感すごすぎる。最後の30分で唐突に始まる宝探しクイズの旅はまさしく映画についての話だと思った。シーゲルの死後、彼の監督した映画を見ることで、今俺は彼の人生の断片を拾い集めている、そんなセンチメンタルな気持ちになる。