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悪い子バビー/アブノーマルのあのレビュー・感想・評価

4.6
なんか定期的にかなり面白い映画を配給するコピアポアフィルムのYouTubeチャンネルをチェックしていたら、謎のめちゃくちゃ面白そうなオーストラリア映画を見つけて早3ヶ月。ついに鑑賞することができました。

まず何と言っても独特のライブ感がたまりませんでした。特に、バンドメンバーとバビーのテーマソングを荷台に乗せたトラックが、豆電球を揺らしながら夜道を走っていくところは忘れられません。このシーンに象徴されるように、照明の使い方が本当に見事でした。

さらにこの映画で本当に感心したのは、バビーのオウム返しグセをうまく使って外の世界での物語を展開していたことです。踏み躙られた35年間の記憶がバビーの余生を形作っていくところに、台無しにされた時間の重さを感じさせつつも、決して安易ではない希望を感じました。

また、バビーに言葉が話せない人たちの声を聞けるという都合のいい能力を持たせてはいるが、しっかりと猫も両親も無垢に殺してしまうところや、家庭を築いてもなお自宅の庭で子供みたいに馬鹿騒ぎしているところが妙にリアリティを保っていました。

かなり荒削りで、宗教的な描写がイマイチ上手く絡んでいないようにも思いましたが、神の造った世界で神を超えて自立していく力が人間にはあるという監督の思いは十二分に伝わってきましたし、「フォレスト・ガンプ」みたいに、ハリウッドがやりがちな鼻につく奇跡を全く起こさなかったところには、かなり好感が持てました。
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