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リリスのmuscleのレビュー・感想・評価

リリス(1964年製作の映画)
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カメラに観賞植物が寄り掛かっていて、明らかに邪魔なのだが、それが登場人物たちにしのびよる不吉さの象徴とか凄惨な過去を表した影みたいに見えなくもなかった。そんな一瞬が最後のほうの場面のカットにあって、まぁわざとかな?それとも考えすぎかな?でもロバート・ロッセンの遺作だし、本当にそんな象徴なのかな?とか考えていたら植物の影を背中に受けていた男は振り向いてカメラに向かって「昨夜はこの木さえ怖かった」と(まるで画面越しにわたしに語りかけるように)発話し始め、こう続ける。「喜びは素晴らしいよ、見えなかったものを聞き、聞こえなかったものを見ることができる」。
 なるほど。まさにこの映画を見続けていくことで画面に巨大な魔の手のような影を作り出す植物の葉の気配を感知できるようにさせられている今のわたしの心身の状態をこそ、この男の言う(ひいては登場人物たちがいま共有しあおうと努力している)状態のことではないだろうか。一瞬なにかが閃いた気がしたけれども、映画の方は「助けてくれ」とこちらに向かって言ったあとあっさりと終わった。本当に変な映画だった。
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