みおこし

リリスのみおこしのレビュー・感想・評価

リリス(1964年製作の映画)
3.5
『オール・ザ・キングスメン』や『ハスラー』シリーズでおなじみのロバート・ロッセン監督の遺作。

帰還兵のヴィンセントは、地元の精神病院で作業療法士として見習いで働き始める。様々な問題を抱えた患者たちの中でも特に印象的だったのは、統合失調症を患う女性リリス。芸術に明るく、聡明な彼女だが、独特な色気を持ち合わせており、同じく入院患者の青年スティーヴンは彼女に惹かれている。やがて、ヴィンセントもそんな彼女の危険な魅力に囚われていくのだが...。

伝説の女優ジーン・セバーグが、一見可憐に見えるが実は真の"ファム・ファタール"という難しい役柄に扮した1本。本作でゴールデン・グローブ賞にノミネートされたとのことですが、いったい何を考えているのか掴めないミステリアスな役柄を見事に演じていて素晴らしかったです。ひとつひとつの言動の裏側にある思惑が全く汲み取れず、前述の男性2人(ウォーレン・ベイティとピーター・フォンダ)もあっという間に骨抜きになって身を滅ぼしていく過程を描いています。

オープニングから蝶の標本をモチーフにした不気味な演出で始まり、終始モノクロの映像美が光ります。
時は1964年、公民権運動やケネディ暗殺、ベトナム戦争本格化などまさに激動のアメリカにおいて、映画界も大きく変容を遂げていた時代。性にまつわる描写もいくつかあるのですが、直接的には描けないからこそ、監督はいかに官能的に見せるかにこだわったと推察。特に"水"がモチーフとして映し出されることが多くて、監督の見事な手腕に唸るばかりです。

常識では捉えられない行動をする登場人物ばかりで、特にリリスの破天荒ぶりには圧倒されるのですが(笑)独特な魅力の1本で楽しめました。
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