荒野のマネキン

雨にぬれた舗道の荒野のマネキンのレビュー・感想・評価

雨にぬれた舗道(1969年製作の映画)
4.6
後の『イメージズ』や『三人の女』、あるいはフロイト影響化のベルイマン、ポランスキー諸作との類似性が垣間見えつつも、出来事の客観性は保たれているし、ヘイズコード撤廃直後の69年という時代性もあって性的な欲求は外在化。ご婦人の「セックスしたい!」は上品に溢れてしまい、もったいぶったところはさほどなし。

ご病気のあからさまなところが魅力的という意味では、むしろ『何がジェーンに起こったか?』に連なるサイコ・ビディに近しい珍品なのでは。

序盤はカットが短すぎて正直不安になる箇所もあったけれども、メインプロットを侵食するフレーム外の会話、凸凹の反射物や濁った透過物を利用した顔面の不明瞭化、遠近感を無効化するズーム、さらに古典的な様式美とヒッピー的価値観の極端な対比に至るまで、70年代アルトマンに馴染み深いスタイル、作家性が充分に見られて条件反射的に興が奮。
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