後の『イメージズ』や『三人の女』、あるいはフロイト影響化のベルイマン、ポランスキー諸作との類似性が垣間見えつつも、出来事の客観性は保たれているし、ヘイズコード撤廃直後の69年という時代性もあって性的な欲求は外在化。ご婦人の「セックスしたい!」は上品に溢れてしまい、もったいぶったところはさほどなし。
ご病気のあからさまなところが魅力的という意味では、むしろ『何がジェーンに起こったか?』に連なるサイコ・ビディに近しい珍品なのでは。
序盤はカットが短すぎて正直不安になる箇所もあったけれども、メインプロットを侵食するフレーム外の会話、凸凹の反射物や濁った透過物を利用した顔面の不明瞭化、遠近感を無効化するズーム、さらに古典的な様式美とヒッピー的価値観の極端な対比に至るまで、70年代アルトマンに馴染み深いスタイル、作家性が充分に見られて条件反射的に興が奮。