勝沼悠

ON AIR オンエア 脳・内・感・染の勝沼悠のレビュー・感想・評価

4.8
 カナダの小さな町で謎のウィルスにより人々が凶暴化。断片的に状況を伝えていたタウンラジオのスタジオにも魔の手が迫る。果たしてウィルスの正体は何か?
 カナダ発の異色のゾンビ映画。

 これはすごい映画である。
 ただラジオブースのみを描くことで成り立たせるゾンビ映画としてもそれなりに面白かったはずだ。主役の人のDJ声も素晴らしい。
 しかし、この映画、何が真にすごいって、ゾンビ発生前から終始一貫してディスコミニュケーションをテーマとしているのである。伝えたいことが伝わらない。伝わってしまうと感染してしまうので伝えられない。感染しない方法を伝えたいけど伝わらない。。。
 言葉を理解することで感染するギミックを活かして、人間の人間たる所以であるコミュニケーションをホラー映画の主役にしてしまっている。哲学的命題をホラー映画に盛り込んでるのだ。これは本当すごい。
 ラストの映像には意味がない。映画の中で散々やった意味がないものを伝えるということなのだ。徹底しているなぁ。

 日本でもリメイクしてほしいと思ったが、日本は主要言語が一つなのと、何も考えず一心不乱にお経を唱えた人が生き残ってしまうというオチが浮かんでしまったので、ちょっと無理かも。
 いや、それでもぜひリメイクしてほしい。それほどの名作。
勝沼悠

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