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カラカラのodyssのレビュー・感想・評価

カラカラ(2012年製作の映画)
1.5
【薄っぺら】

期待して見たけれど、薄っぺらな映画だったね。がっかり。

どうして薄っぺらかというと、主役二人の抱えている人生の悩みがちゃんと描かれていないから。工藤夕貴は夫が絵に描いたようなDV夫というだけだし、ガブリエル・アルカンのほうは話だけなので、家族の不和の実態がさっぱり分からない。

人生に傷ついた二人が沖縄の自然や地元の民俗的な工芸などにより癒やされる、という筋書きのつもりだろうけど、途中かなり無理が感じられる。

例えば、アルカンは菜食主義者だという設定だけど、宿に着いて食事が出てからそれを言い出すって、ふつうナイでしょ。あらかじめそう伝えておくものでしょ。また、工藤夕貴は、作った人に悪いからといって、菜食主義者に無理矢理肉を食べさせるんだよね。これって、DV夫が自分にやってることと変わりない、って思わないのかな?

そもそも、工藤夕貴はカナダからやってきた老境の男に自分が今抱えている家庭の問題をかなり押しつけている。身勝手女なんだよね。アルカンは一度は逃げだそうとするわけだけど、結局工藤に付き合ってしまう。かわいそう。

かわいそうではあるけど、しかし逆に工藤夕貴はかなり早い段階でアルカンにセックスを・・・・なんですよね。ちょっと早すぎない? 日本の女はすぐ落ちる、というイメージを生みそう。しかもセックスの途中であられもない大声を上げるし。何やってんだ、と言いたくなる。

映画の中で出てくる基地問題にしても、本当にまじめに考えてるとは思われないね。

基地があるのは単にアメリカのエゴのためだけじゃない。第二次大戦直後ならソ連を中心とする共産圏と西側自由主義諸国との対立という図式があり、そうした中でユーラシア大陸の東側に近い沖縄に基地が配備されたわけだ。それは韓国やドイツなどにもアメリカ軍基地が配備されたのと同じことだし、逆にソ連だって東欧の衛星国だとか、北朝鮮や中国、(昔の)北ヴェトナムなどに軍事的援助をしていた。

そして今なら中国と日本が国境ラインをめぐって争っているでしょ。そのような国際的状況があってアメリカ軍の基地があるという構図なんだけど、そういう政治的な問題にまったく言及せず、単に情緒的に基地は嫌だ、マイケル・ムーアに連絡する(ここ、笑いました)って、はっきり書くけど白痴かと思ったね。

まあ、カナダ人が沖縄のおかれた地政学的な状況を分からないのは仕方がないかも知れないけど、日本人が分からないんじゃ救いようがない。それに、沖縄の人たちが基地を嫌っているのは半分の真実ではあるけれど、基地のおかげで経済的に助かっているというのも残り半分の真実でしょう。表面だけなぞって物事が分かったような映画、作るな、っていうの。

この映画で見るべきところは、工藤夕貴の熟女ぶりですかね。昔は少女っぽいというか、子供っぽいイメージが強かった彼女だけど、いまや42歳、いい女になってきたね。もともと子供っぽかったせいか、実年齢より若く見え、30歳と言っても通りそう。もっとちゃんとした映画に出て魅力を発揮して欲しいな。
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