芦屋紀文

パフューム ある人殺しの物語の芦屋紀文のレビュー・感想・評価

3.8
天才と変態は紙一重なのか!?

18世紀のパリ、悪臭のたちこめる魚市場で産み落とされたジャン=バティスト・グルヌイユ(ベン・ウィショー)。驚異的な嗅覚を持つがゆえに、奇怪な青年として周囲に疎まれている彼は、ある晩、芳しい香りの少女に夢中になり、誤って殺してしまう。その後、彼は少女の香りを求めて調香師になり、香水作りに没頭するが……。


驚異的な嗅覚という特異な能力の持ち主という設定で、ここまできちんとした物語になるのが本当に凄いと感じた。
やはり人物の掘り下げをきちんと行えば、どんな変態だってたちまち魅力的な人物になり得るのか。

世の中、特異な才能や能力を持っている人は、周囲からなかなか受け入れてもらうことができない。
歴史上に名を残している天才たちも、最初は人々に受け入れられず孤独だった。
何を馬鹿なことを言っているんだと。
しかし、人々はやがて気づき始める。
こいつはすげえ奴だと。
手のひらを返したようにみんな擦り寄る。

愛に恵まれなかった孤独な主人公。
純粋な自分の欲望に向かって突き進む姿は、
変態ストーカー野郎だけど、見方を変えれば
天才そのもの。
やがて大きな奇跡を生み出し、誰にでも愛される術を手に入れる。

で、あのラスト。
切ない。愛を知らない主人公。
永遠などこの世にはないんですね。
芦屋紀文

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