ツクヨミ

クラウド アトラスのツクヨミのレビュー・感想・評価

クラウド アトラス(2012年製作の映画)
4.4
社会に牙向く"反逆"の意思は受け継がれる。
1849年ある弁護士の航海記録・1936年ある作曲家の悲劇・1973年巨大企業の陰謀に立ち向かった女性・2012年ある編集者の脱走記録・2144年クローン少女の悲劇・2321年崩壊した地球での戦い。6つの物語は進んでいく…
ウォシャウスキー姉妹、トムティクヴァ監督作品。今作は異なる6つの時代の物語を並行的に描くストーリーで、D・W・グリフィス監督の"イントレランス"に似た面白さを感じました。"イントレランス"では4つの異なる物語を不寛容と愛というテーマで繋ぎ止めていましたが、今作は個人的に"社会に対して大なり小なり反逆していく"ことが一つのテーマとなっているように思う。1849年では弁護士が黒人差別と徹底的に戦うという意思、1936年ではホモセクシャルの作曲家がLGBTQ差別に抵抗する意思、1973年では黒人女性が巨大組織の陰謀に抗おうとする意思、2012年では老編集者が老人ホームに押し込まれるも脱走しようとする意思、2144年では意思を持ったクローン少女が社会に反抗しようとする意思、2321年では崩壊した地球に住んでいる男が強力な部族を倒し自由を勝ち取ろうとする意思、これらの意思は最初から小さく繋がり受け継がれていくという展開が見え流れが美しい。
また今作は"イントレランス"と同じくクロスカッティングを大々的に活用し話を展開していくのは同じだ。しかし最初からガッツリクロスカッティングしていくので少々飲み込みずらいというのはあるが、一旦慣れてしまえば美しきカット割の流れに身を任せてしまえる魅力がある。特にマッチカットを活用した橋を逃走する場面からマスト上を逃走するカット割と、マッチカットを活用した銃撃から銃撃へのカット割は流麗で素晴らしかった。
しかし今作はテーマは一貫しているものの、話の肝となる見せ場がバラバラに配置されているせいか感情的には追いにくいと感じた。そこは"イントレランス"のほうがラストミニッツレスキューで4つの話を収束する美しさのほうが良いとは思う。
全体的に見ると現代版"イントレランス"という見方で鑑賞したが、6つの物語をうまく並行的に描いていたことや意思を受け継いでいく物語の素晴らしさが突出していたので良い意味で"イントレランス"とは差別化できていたと思う。
ツクヨミ

ツクヨミ