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伴奏者のtkykのレビュー・感想・評価

伴奏者(1992年製作の映画)
4.5
全ての場面が格調高い上に視線や表情で心理描写しており、まさに「映画を観ている」と思わせる映画だった。
格調の高さは上流社会の煌びやかさだけでなくソフィやイレーヌの表情にも表れていたし、彼女達の存在こそ1番の魅力とも思えた。
序盤のソフィが初めてイレーヌを見た時の恍惚とした表情に代表される様にソフィの表情は言葉なくして心情を的確に表現しており、それと共に言葉では表現しきれない心情のグラデーションも含んでいるので観た人が各々で彼女の心情を汲み取る余地があった。ロマーヌ・ボーランジェの見事な演技が光っていた。

「伴奏者」という題名が全てを物語るような人間模様も印象的だった。
表舞台で輝くイレーヌの影で伴奏者として仕えるしかないソフィがイレーヌに対して抱く感情が、イレーヌが夫に対して抱く感情、更には夫がドイツに対して抱く感情と重なるという構図が見事だった。
ソフィは初めのうちはイレーヌの信頼を得て、いつかは自分も富と名声を得たいと考えていたが、それがいつしかイレーヌへの嫉妬へと変わる。こういった仕える側の人間が次第に己の欲求のために相手を裏切ろうとする展開はイレーヌと夫との関係性にも起こっている。
表舞台でイレーヌは輝いているがその内実は夫の商売道具として利用されており、イレーヌは道具として自分を扱う夫への裏切りや自分自身の欲求のために密会を重ねる。
そして夫自身もナチスに使われる側であり、自由を求めてイギリスへと亡命する。
この様に3人とも誰かに搾取されながらも自分の欲求を満たそうとしている。そしてその顛末は非常にドライなものであり、それを象徴するかの様に最後はソフィからカメラが徐々に離れていく。

前述の様にとにかく画の豊かさはここ最近観た作品でもトップクラスであり、その立役者はソフィを演じるロマーヌ・ボーランジェだった。現代の日本でリメイクするならソフィ役は間違いなく山本美月だと思うぐらい瓜二つだったのも印象的だった。
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