あずき最中

レ・ミゼラブルのあずき最中のレビュー・感想・評価

レ・ミゼラブル(2012年製作の映画)
4.4
最初の40分くらいは、ジャン・バルジャンの暗い生い立ちや、コゼットの母・ファンテーヌの悲惨な生活が描かれるため、見ていて辛かった。最初の「look down(下向け)~」の唸るような歌声からすでに重たい、救いのない雰囲気で始まる。

バルジャンが銀食器を盗み、司祭に庇ってもらう場面は、これこそが「左の頬を差し出されたらもう片方の頬も差し出しなさい」ということなのかもと納得がいった。
また、ファンテーヌが地下生活で髪を切ったり、歯を抜かれたり、身を売ったり、という一連の流れは、やはり女性としては見ていてかなり辛い。「夢やぶれて」の「こんなはずじゃなかった」という歌声が表情も相まって、観客の心を震わせると思う(スーザン・ボイルよりこちらの方が私は好き)。

中盤のエポニールの「on my own」も、すごく良かった。彼女ももともとはコゼットに対して辛くあたっていたわけだが、自分の感情よりもマリユスのために献身的に動く姿にはやはり感動してしまう。この作品のテーマの一つは救い、(男女に限らない広い意味での)「愛」だと思うのだが、実は彼女が司祭に次ぐ「愛」の実行者だったと思う。

バルジャンは善行もするのだけれど、少なくとも映画だと、マリユスを助けたのは「愛しいコゼットを幸せにするため」というすこし独善的なイメージもぬぐえなかった。
ジャバーニは、もちろん法に則った「正しい」行動はしているが、自分の判断力というものに欠けている点が目立つ。これは宗教の信仰にも通じるが、なにかに依存し、思考停止をすることは他者に対してだけでなく、自己の破滅と紙一重な部分があり、そういう風にはなるなよ、という寓話的なキャラクターでもあるのでは。

コゼット、マリユスは、他のメンツがメンツだけに、主役級のわりに、あまり見せ場らしい見せ場がなかったな...と思うので原作を読んで補完していきたいと思った。マリユスが銃を構えるのはやたらかっこよかったけど。

革命は無惨な結果となってしまったが、それでもその行動は無駄にならない、自分たちのあとに道は開けると信じ、行動したことは本当にすごいと感じたし、現実においても、先人たちの闘争のあとに、今の自分がいるということを感じ、改めて敬意を表したいと思った。
※もちろん、流血、犠牲はないに越したことはないし、愚かだと思うひとがいることも理解できるが、それはある程度の生活を送れているからで、なにかの限界に達した場合、もはや死をも恐れず行動するしかないということはあり得ると思う。

フランスは優美な国だというイメージがあるが、貧富の差や革命の名残は今でもあるのだろうし、それは「美しい国」と称される日本にも言えることかもしれない。

音楽も話の面でも、とても優良な映画だと思うので、一見の価値ありとおすすめしたい。
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