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ザ・マスターのヨウのレビュー・感想・評価

ザ・マスター(2012年製作の映画)
3.8
第二次世界大戦後にセンセーションを巻き起こした新興宗教団体。カリスマ溢れるマスターの元に一人の青年がやって来る。自己に内在する過去を呼び覚ますことによって心を浄化する革新的な施し。含蓄に溢れた数々の教示。大いなる啓蒙の魔力に吸い寄せられ、集団の中で頭角を表していく。しかし徐々に浮かび上がる疑問と葛藤。圧倒的な存在性やどこか乱脈とした人間関係を前に度々翻弄され、乖離と融和を繰り返す。移ろいゆく心情から導き出される一つの悟り。偉大なるマスターへ愛憎入り混じる感情を露にしながらマスターによって無意識的に人生観を見つめ直す顛末から我々の胸にも何らかのインスピレーションが刺さったことであろう。胡散臭さを纏わりつかせながらも不思議な求心力で多大なる影響を与えるこうした人身掌握術には恐れ入る。謎多き思想集団へ焦点を当てながら人間の心理に潜む曖昧さや弱さを暗喩しているようにも感じた。新興宗教に隠された事実を暴き、主人公と同様に観客の心をも手玉に取って狡猾に操るまたとない映画体験。なかなか解釈の難しい作風でもあり、モヤモヤとした余韻が後を引く。時を経て再び鑑賞すればまた違った魅力が了得されるということであろうか。PTAの神妙なマジックにまたもやかかってしまった。ホアキンフェニックスとフィリップシーモアホフマンの力強い演技には圧倒される。このダブル主演はザ・貫禄という感じで最高ですね。
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