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ザ・マスターのadeamのレビュー・感想・評価

ザ・マスター(2012年製作の映画)
2.0
早熟の天才監督ポール・トーマス・アンダーソンがヴェネツィアで銀獅子賞を得た重厚なドラマ。
第二次大戦からの帰還兵でアルコール依存の男が宗教指導者と出会い、傾倒していく様を描く物語です。
ホアキン・フェニックスの鬼気迫る芝居は今にも爆発しそうな男の危うさに説得力を持たせ、対するフィリップ・シーモア・ホフマンも一歩も引かない存在感を発揮した演技合戦は一見の価値がありました。
しかし指導者との関わりによって浮き沈みする男の内面の変化がおもしろいとは思えず、奇妙な友情がカオスにも衝突にも向かわず結末を迎える展開にはモヤモヤしました。
作風に重みが増して風格が出たのと引き換えに、キャリア初期の瑞々しさが失われたのは成長と捉えられても、独りよがりな印象が強くなってしまったのは残念でした。
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