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夜ごとの美女のhasseのレビュー・感想・評価

夜ごとの美女(1952年製作の映画)
4.6
演出5
演技4
脚本4
撮影5
音楽5
技術5
好み5
インスピレーション4

めちゃくちゃ面白い!楽しい! これぞ映画!と拍手したくなる作品。現実と夢の往還、楽しげに鳴り響く音楽、美しい女性たち、人間讃歌ーー大好きな要素がこれでもかと詰め込まれていた。

売れない作曲家は現実に嫌気が差し、夢に逃避するようになる。夢では幾つかの「古きよき時代」を遡り、魅力的な女性たちとのラブロマンスを繰り広げるが、次第にうまくいかなくなり命を狙われる。現実では彼を心配する友人たちに助けられながら、近所の修理工の娘と相思相愛になり、作曲家として成功のチャンスを掴む。

1950年代という現代に氾濫する機械音、煩雑な事務手続きや無駄に思える規則、音楽家・芸術家への無理解。これらがない「古きよき時代」など所詮幻想であり、小市民は現実を見て生活に勤しむしかないーー主人公はそう悟らされる羽目になるが、しかし観ていてあんまり嫌な気はしない。むしろ、肯定的にとらえられるというか。

現実から夢へ、夢から夢へ移行する際の素早いカッティングの妙も必見。

主人公に夢を与える美女たちも素敵。
1900年代のオペラで出会う婦人/ピアノを教える家庭の婦人…マルティーヌ・キャロル
1830年代のアルジェリア令嬢/カフェ店員…ジーナ・ロロブリジダ
ルイ16世時代の貴族令嬢/修理工の娘

近所の人にバカにされながらも心配される様子、近所の人同士の距離のちかさは下町風情があってよいな。主人公のキャラは全然違うが『男はつらいよ』を観てる感覚に近いものがあった。
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