まじさん

ファイヤー・ウィズ・ファイヤー 炎の誓いのまじさんのレビュー・感想・評価

4.2
アクション・コーディネーター出身と言う異例のキャリアの新人監督デヴィッド・バレットの作品である。
マフィアの重大な事件の目撃者を守る、証人保護プログラムを題材にした社会派のテーマを持った作品だ。命を狙われる可能性の高い証人は、裁判で証言するまで、戸籍を抹消され、政府が用意した見知らぬ土地の住居で、別人として暮らす事を強いられる。その代償の大きさと危うさを描く。

主人公の消防士を演じるのは『トランス・フォーマー』でリーダーシップを発揮する軍人を演じたジョシュ・デュアメル。ここでも、正義感の強い男を演じている。
彼を守る女性捜査官に『レント』のロザリオ・ドーソン。事件の担当警察官にブルース・ウィリス。今回は脇役に徹した抑えた演技をしている。
そして、マフィアのボスを『フルメタル・ジャケット』で強烈な存在感を見せた「微笑みデブ」ことヴィンセント・ドノフリオが、文字通りの怪演を魅せる。監督が熱望したと言う彼の演技は素晴らしく、本当に恐ろしい。フィリップ・シーモア・ホフマンを彷彿とさせるが、彼よりもデンジャラスな雰囲気を持っている。この4人の素晴らしいアンサンブルがこの映画の魅力である。この新人監督が描くサスペンスは、実に魅力的である。そして、主人公がある重大な決断をした事から、意外な展開になるのも楽しめる。

残念なのはラストのアクションシーンの描き方が雑な所だ。一流のアクション・コーディネーターだった監督なのにこれは驚きだ。おそらくは予算か、上映時間の制約に縛られての事ではないかと思われる。

だが、それを差し引いても、この作品は秀作である。少なくとも、同時期にスター俳優主演で公開された映画で、同様に新人監督で、脚本家出身のクリストファー・マッカリーの『アウトロー』よりは、かなり良い出来だった。緊張感の出し方や俳優の使い方はどれも見事だ。今後の彼の作品には、注目して行きたい。