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やくたたずのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

やくたたず(2010年製作の映画)
4.3
【ジム・ジャームッシュ率100%】
この前、日本映画専門チャンネルで三宅唱監督特集をやっていた。三宅唱といえば、「Playback」で映画芸術ベストテンに選出される程注目された監督。私も以前、彼の「THE COCKPIT」を賞賛したことがある。そんな次回作がインディーズ監督快進撃の登竜門である佐藤泰志原作もの「きみの鳥はうたえる」とますます期待が高まっているので、今回彼の初期作品「やくたたず」を観てみた。

今回、「Playback」と一緒に観たのだが、ジム・ジャームッシュの空気感や構図に近いものを感じる。ジム・ジャームッシュと言えば、「コーヒー&シガレッツ」や「ストレンジャー・ザン・パラダイス」など、脱力感ある世界観をメチャクチャかっこいい構図に閉じ込めるのが上手い監督。多くの映画好きを虜にし、多くの映画好きは彼の映画を真似ようとするのだが、ほとんど失敗に終わる。ブンブンも、ジム・ジャームッシュを意識した動画を作り失敗したことがある程、質感の再現は難しい。

しかし、参考にしたかどうかは別として、三宅唱監督の作品は非常にジム・ジャームッシュっぽい。人生にやる気のない人たちが、なんとなく「その日」を生きている感じを、格好良すぎる画に封じ込めている。そして、三宅唱にしかない着眼点で唯一無二な作品を生み出している。

今回の場合、高校卒業間際の男子生徒がアルバイトをすることで「大人」になっていく様子が繊細に描かれている。アルバイトを始めるのだが、不器用で全然期待通りに働けない。でも、なんとかして会社に貢献しようともがく、しかし役立たずのまま。この苦しみはブンブンも経験したことがあるだけに、心にぐさっっと刺さる。

ロッセリーニ等のネオリアリズモ作品を思わせる、ドキュメンタリーっぽさ6割、映画っぽさ4割で描かれているので高校生達の蹉跌に心が苦しくなるのだが、後半の映画的物語の起伏で娯楽的面白さもある。不器用な男子高校生が「車」をコントロールすることで、大人になることを強烈に象徴した、後半のある事件に注目して観て欲しい。

どうやらDVDは出ていないようなので、もしなんかの機会で観ることがあったら、本作はMUST WATCHですぞ!
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