なまにく

ジャックナイフのなまにくのレビュー・感想・評価

ジャックナイフ(1989年製作の映画)
4.1
ベトナム戦争でPTSDになったデイヴの元に現れたイカれた戦友メグスの話。この映画観てる途中、なんでメグスとデイヴはこんなに戦後の差があるんだろうって思ったんだけど、メグスは志願兵で、デイヴは徴兵制で戦争に行ったのね。そりゃあPTSDになりますわ。

物語の冒頭から、ロバート・デ・ニーロ演じるメグスが、所謂「イかれた奴」っていうのを魅せてる。街が普遍的で人々ものんびり暮らしている故に、メグスのやけにハイテンションな姿が浮き彫りになっている。でも彼はコミュニケーションが出来ていて、なんだかんだ人々と溶け込んでいる。まずここで、彼はイかれているかもしれないけど、帰還した兵士達と定期的に会って、過去を見つめ、それでも彼なりに今を生きる事を選択している。この微妙な加減が素晴らしいと思う。
対するデイヴは酒を飲みまくって、イかれたメグスを「イかれた奴」としてあしらっている。追い払うことはないが受け入れる様子は全くない。一見、陰鬱なおじさんにしか見えないけど、要所要所でたかが外れている。エド・ハリスって善悪関係なく、芯のしっかりした役をしているイメージがあったから、この芯がボロボロの姿は正直見違えるほどで、全編通してこの人凄いなあって感じた。

話はただ日常を描いている。メグスがデイヴの妹のマーサに惚れて、マーサもメグスに惹かれていくっていう単調なものだけど、でも彼らが単調に暮らすのなんて難しいわけで。メグスとデイヴを対比して描くけど、デイヴなんて妹とメグス以外全然人と話すことが少ない。マーサの「人がいるところに帰りたいだけでしょう」という言葉は本当に刺さる。とても切なくて心温まる映画でした。
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