Omizu

故郷よのOmizuのレビュー・感想・評価

故郷よ(2011年製作の映画)
3.5
【第68回ヴェネツィア映画祭 国際批評家週間出品】
新作『テルアビブ・ベイルート』が東京国際映画祭コンペに出品されているミハル・ボガニム監督作品。チェルノブイリ原発事故を描いた作品。主演は『007 慰めの報酬』ボンドガール、『ブラック・ウィドウ』タスクマスター役などのオルガ・キュリレンコ。

監督自身はイスラエル出身のようで縁はないものの、入念なリサーチをして作品を完成させたようだ。奇しくも公開年が東日本大震災と同じ2011年であり、東京国際映画祭のインタビューではそのことにも言及している。

まあ演出やプロダクションに特に新味はないものの、丁寧で好感の持てる作品ではあった。チェルノブイリ原発事故にあたって消火活動をする人や技師といった直接関わる人々、そしてその妻や子供など間接的に関わる人々を描き多層的に事故を捉え直している。

オルガ・キュリレンコは微細な演技で、新婚にも関わらず夫を亡くし、プリチャピから離れられない女を丁寧に演じていた。

当初ソ連は原発事故を隠蔽しようとし、36時間もの間プリチャピの住民に事故が知らされなかったという闇の深さ…

原発事故のもたらした実害はもちろん、難民や部外者からの偏見といった問題も鋭く描き出している。

ここがいい、というのは特にないけど、社会派フィクションとしては及第点という感じではないかと。秀作。
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