パングロス

暗夜行路のパングロスのレビュー・感想・評価

暗夜行路(1959年製作の映画)
4.0
◎私小説的原作によるメロドラマ仕立ての名作

1959年 140分 モノクロ 東京映画製作 東宝配給
シネマスコープ *状態は概ね良好

ラストの大山寺の宿坊シーンを覚えているから、たぶん再見だ。

とにかく、あのつまらない志賀直哉の『暗夜行路』を、これだけ面白くドラマ化したのだから、やはり名匠豊田四郎、大した手腕だ。

原作を読んだだけでは、これだけ個性的な生き生きとした女性たちが登場していたとは気づけなかったのではないかと思う。

本作では、淡島千景は、時任謙作の祖父の妾お栄という日陰の女なので、さほど目立たず、謙作の妻となる直子を演じた山本富士子がヒロインだ。

中盤までの山本富士子の天真爛漫な娘ぶりが眩しい。

とにかく原作の謙作は、自己弁護というか自家撞着が甚しくて、とても付き合っていられないのだが、本作の池部のように、それをセリフとしていちいち言語化されてみると、これはこれで一つの個性だな、と思えて、それなりに面白く観られるのであった。

謙作の友人の北村和夫とか、父親の中村伸郎とか、とにかくキャストに穴がないし、尾道、京都、滋賀、大山とロケも丁寧で、本当によくぞ、原作を見事に映画化したものだと感心する。

謙作の京都での住居は、南禅寺の塔頭らしきところの設定だが、画面では、真如堂近くを映し出していた。
それに、いくら祇園祭の盛りでも、南禅寺や真如堂のあたりでは祇園囃子は聴こえて来ない。

向日町駅が登場するのは、おそらく他には例がなく貴重ではなかろうか。

《参考》
*1 「暗夜行路」で検索
ja.m.wikipedia.org/wiki/

*2 暗夜行路(1959)
1959年9月20日公開、140分、文芸
moviewalker.jp/mv26213/

*3 日本映画の鉄道シーンを語る
348.暗夜行路
山陰本線
2021/10/2919:20
tetueizuki.blog.fc2.com/blog-entry-365.html

《上映館公式ページ》
生誕百年 女優特集・第2弾
〈宝塚歌劇出身の2大女優〉
越路吹雪と淡島千景
2024.4.29〜6.7 シネ・ヌーヴォ
www.cinenouveau.com/sakuhin/koshijiawashima/koshijiawashima.html
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