カント

ナインハーフのカントのレビュー・感想・評価

ナインハーフ(1985年製作の映画)
3.6
凡百の愛の物語だけどドラマに起伏が少ない分、心の変化をジックリ描いている。
性の倒錯度B級。

男女の交わりの本質は互いの粘膜を見せあう事…と言う意味では倒錯度A級。食事の風景でさえ2人の間ではセックスの前戯に見えてくる。

サンフランシスコ。とある画廊に勤めるリズ。同僚モリー(下ネタ好き)は、離婚したばかりのリズを励ますけれど、リズは心が晴れない。
サンフランシスコの雑踏の騒音が、リズの心を余計にザラつかせる。

チャイナタウンで見かけたジョンが気になるリズ。ジョンの方もリズの思いつめたような、憂いを秘めた表情を気にかけていた。
あくる日ノミの市で、リズを見かけたジョンはお茶に誘う。
意気投合と言うより、お互いに一目惚れ。リズにとってジョンは寂しさを紛らわす最良の恋人だった。

ジョンの“前戯”は、普通じゃない。
おそらく、この映画を有名にした「氷の愛撫」もそうだけれど、その前の遊園地の乗り物でリズを高い所に置き去りにするイタズラも、高度な前戯の技。
※SMに『放置プレイ』ってのが有りますが、遊園地のイタズラはパブリック放置プレイの前戯。
ただの意地悪に見えるけれど、ジョンの構想では放置プレイで、リズの心も身体も裸にする効果を狙ったモノと考えられる。その効果は覿面(テキメン)!

目隠しプレイ。音の束縛。
野菜、果物、苦いお薬。
蜂蜜プレイ……なんでもかんでも前戯のアイテムにしてしまうジョン。愛の喜びを甘受するリズ。そして鞭の風切り音。

2人の夜の時間を大切にするジョンだけど、ジョンの昼の顔を知らないリズは不安を覚える。
画廊の同僚モリーは、リズの別れた旦那と接近。リズの担当する老齢の肖像画家シンクレアは一向に作品制作が進まない。

リズは、ジョンの“昼の顔”を知りたくて行動を起こす。
果たして2人は幸福になれるのか。

本作のタイトル「9 1/2」は…
名作古典「8 1/2」を意識したものなのかしら?
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