ちゃむ

風立ちぬのちゃむのレビュー・感想・評価

風立ちぬ(2013年製作の映画)
4.2
宮崎駿は、社会派アニメ・子ども向けアニメを経て、ジブリをある種の芸術作品に昇華したなって感じがする。今作は夢と現実、過去と現在の境目がとても曖昧なのだが、そこに言葉にされない二郎の理想と葛藤が映し出されている。登場人物に感情移入して見たとき、二郎と菜穂子の生き様はとても美しかったし、その美しさが必ずしもハッピーエンドに向かわないのが悲しくて泣いた。

ただ、一歩離れて客観的に見ると、二郎の戦争に対する無責任さは、菜穂子に対する無責任さと通ずるものがある。自分の行動がもたらす帰結を、わかってるし、嘆いているのに、抗おうとはしていない。これを、天才たる者の悲運として、その時代に必死に生きた者として、仕方がなかったと言えるかどうか。引っ掛かりの残るところではある。
が、現代の私たちも、二郎を批判できるのかっていう話でもある。私たち自身、日々の消費行動、投票行動の帰結を分かっているのか、抗おうとしているか。国の大勢に流されて生きているならば、けっきょく今も昔も変わっていない。
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