訳あって15年以上宮崎駿作品を見ていないなかった。一言で言えば宮崎駿を嫌いになったから。しかし、この「風立ちぬ」はあらすじを知って見なければいけないと思っていた。
宮崎駿は司馬遼太郎の葬式で「司馬さんはこれからの悪くなる日本を見なくてすむ」と言った。日本で一番多くの人に見られている映画監督が日本という国に絶望している。これはすごい皮肉である。それでも宮崎駿は日本で最も多くの人に見られる映画をつくり続けた。
そんな宮崎駿の長編引退作が「風立ちぬ」。これは宮崎駿の業の話だと思う。
主人公次郎には社会をよくしたいという思いがないでもない。迫り来る戦争の足音も知っている。菜穂子への愛も本当だ。でもそれでも彼は美しい飛行機をつくるということを全てに対して優先してしまうのだ。だってつくりたかったから。
結果として菜穂子に対しての次郎は残酷でしかない。そして日本という国に対しても。。。
宮崎駿はなぜ映画をつくり続けたのだろう? その答えは次郎と同じなのだ。ただつくりたかったから。残酷なまでのクリエーターの業。
だから次郎の声は同業者の庵野秀明がやっている。恐ろしく下手糞な彼の演技が終盤に入って不気味なほどしっくりはまっていると感じたのは私だけだろうか。
「風立ちぬ」はむきだしの宮崎駿のエゴ、業の話なのだと思う。
宮崎駿の引退作としてこれ以上の作品はない。