サーフ

風立ちぬのサーフのレビュー・感想・評価

風立ちぬ(2013年製作の映画)
3.6
「君たちはどう生きるか」が公開され、結局撤回となったが公開当時は宮崎駿引退作品という触れ込みだった「風立ちぬ」。
「ナウシカ」「となりのトトロ」「千と千尋」などこれまでの宮崎アニメはファンタジー要素を含んだ作品だったが今作はそのファンタジー要素は皆無で飛行機に魅せられ航空技術者となった主人公の半生が綴られたヒューマンドラマとなっている。

個人的にそのキャラクターの声が映画の世界観とマッチしていれば演技の上手さに二の次で良いと思っていて、この映画の主人公の声優を務めた庵野秀明は確かに棒読み甚だしいけれど朴訥としながらも揺るぎない信念があるキャラクターの雰囲気には合っていると思う。

この映画の主人公は宮崎駿自身の投影なんじゃないかと見ながら思った。主人公の飛行機に懸ける思いは監督のアニメに懸ける思いと重なるし、何故この映画の主人公の声が庵野秀明なのかも辻褄が合うような気がする。
自分では演技出来ないから同じアニメーション監督でジブリ作品にも参加していた庵野秀明に声を当ててもらう的な。

主人公の飛行機に懸けた人生とか切ない愛とか主人公の生き様は非常に美しいと思えるもの。だけどその主人公の美しさの結晶のような飛行機が結果的に人々を戦禍の中に放り込み地獄絵図を作り上げてしまう事実は何とも遣る瀬無い。主人公の半生が美しいものであればあるほど美しさの結果としてやってくる戦争の悲惨さもより色濃く感じてしまう。
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