紅茶

風立ちぬの紅茶のレビュー・感想・評価

風立ちぬ(2013年製作の映画)
4.2
「創造的人生の持ち時間は10年だ。 君の10年を力を尽くして生きなさい」

飛行機の設計士である二郎が、夢の中に生きるカプローニ伯爵から伝えられた言葉。飛行機は殺戮兵器としての使途を余儀なくさせられるが、二郎は決して自分の"美しい夢"である飛行機設計をやめなかった。劇中で"ピラミッドのある世界"と喩えられるように、今までの文明の発展は多くの犠牲を払って成し遂げられたものである。二郎はそれを承知で自分の夢を追い続ける。ある意味反感を覚えるかもしれないが、10年という限定的な期間の中で、燃え尽きてみせるという覚悟がそこに確かにあった。寝床についている結核持ちの菜穂子の手を片手で取りつつ、もう片方の手でペンを握りしめ仕事に勤しむという描写は彼の両面の態度をよく表している。これは、完全に酸いも甘いも経験した人に刺さる作品だが、個人的には以前鑑賞した時よりも心に訴えかけてくるものがあった。
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