MinaMi

風立ちぬのMinaMiのレビュー・感想・評価

風立ちぬ(2013年製作の映画)
3.6
初めて観た時は男性のための映画だと思った。けれどもう一度観たら夢を持った全ての人のための映画だと思った。
創造的人生の持ち時間は10年という言葉は宮崎駿の遺書のようでもあり一抹の寂しさを感じる。
宮崎監督の作品はナウシカ然り、ラピュタはもちろん、トトロでさえも空を飛ぶシーンがとにかく印象的で、昔から空飛ぶ映画として認識していた。
魔女宅と紅の豚が二大好きなジブリ映画だったが、今は本作が一番好きになった。
多分、大人になるとピーマンやビールが美味しく感じるように、ほろ苦くてどこか寂しい作品が好きになるのかもしれない。
王道過ぎるし、出会いも再会も別れすらも出来過ぎているけれど菜穂子のシーンはうっとりして泣ける。
狂気の夢を語るカプローニは悪魔のようでもあり、あまりに純粋な夢は呪いにすらなるのだと、はっとさせられる。
風立ちぬ、生きなくてはならない。
大切な人を永遠に失おうが、自分の作った戦闘機で帰らぬ人々を送り出そうが、自分の夢を追いかけて、今日も明日も生きなくてはならない。
その言葉には生命を賛美する力強い意志というより、弱々しいけれども再び立ち上がろうとする小さな希望と、10年の持ち時間が過ぎても、やれやれめんどくさいと言いつつまだ創り続けようとする男の姿が重なる。
宮崎駿は戦争嫌いのくせに飛行機、特に戦闘機が大好きで趣味全開の本作を作ったことに開き直りすら感じる。楽しそうでとてもよい。

・脚本 6/10
・演技 7/10
・演出 9/10
・音楽 7/10
総合点 29/40
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