かきぴー

愛、アムールのかきぴーのレビュー・感想・評価

愛、アムール(2012年製作の映画)
3.2
なんでしょう、ガツンとは来なかった。

最初に結末を見せ、なぜそのように至ったのかを説明する映画だからなのか、「そうっすよねー、そうなりますよねー」という気持ちだった。

この映画は「徹底的に閉じた世界(二人にしかわからない世界)」というのがポイントだったように感じたので、ハネケの長回し(?)が機能していた。だんだんと、そしてスッと二人の世界に入っていけたかなと。そこが上手くいったからこそ、あまりガツンと来なかったと考えると、ハネケの勝ちなのかなー。でも、観る観られる側の逆転現象はあまりなかったので、正直物足りなかった。

ただ、本当に丁寧に作られた作品であるのは間違いない。人間を動かしてドラマを作っているとはまさにこのことで、どのキャラクターにも違和感を抱かずに自然に観れたことは間違いない。


〜ここから若干ネタバレ〜
結論も、「妻の思いを汲み取った夫が妻の望む通りにしてあげる」という両方向の愛を確認できるものだった。行き過ぎた愛が「徹底的に閉じた世界」になってしまい、周りの価値観ではもはや裁くことのできない状態に行ってしまう映画だった。申し訳ないが、語弊を恐れずに言うと「わりとありがちなテーマ」だった。しかも、前述の通り「この結論をすんなりと受け入れてしまう」ので、心に傷はあまり残らない。

何度も考えるが、これが成功と捉えるか失敗と捉えるかは難しいところだ。
「非常識的な状態を自然に受け入れることができる、完璧な世界観への誘導」と捉えれば成功であり、逆に「こちらの想像の範囲内でしか事が起きておらず、そこまで心に傷をつけられなかった」と捉えれば失敗であろう。まぁ、この議論には終わりがないのでこれ以上はしないが、私の映画に求めてるものの基準からするとこの映画を手放しに褒めることはできない…。

ただそれでも私の心に残ったのは、最初のシーンで「あの部屋の窓が開いていた件」。閉じた世界だと強調したが、最後はそう考えると開かれた世界へと旅立っていったと捉えると感慨深い。泣かせるぜハネケ。
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