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千年の愉楽のameのレビュー・感想・評価

千年の愉楽(2011年製作の映画)
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女に圧倒的な愉楽を与える美しい男たちの刹那的な運命に心がちぎれ泣けた。

愚かさと隣り合わせの脆さ。 

脆さと肩を並べた孤独。 孤独を救う母性。

女にまみれながら早くに死んでしまうのであろう運命を背負いながら、快楽の為に波止場のように女と金と薬を渡り生きてゆく愚かさの裏側には、自分のことを気にかけてくれるおばの母性が唯一の拠り所だったのだろうな。  


とくに高良健吾さんが演じる半蔵からその寂しさや切なさが感じられた。 

おばを愉楽に誘うが相手にされない。様々な場所でたらい回しに育てられた冷たい生い立ちの中、この人だけは自分を律して断る。 それがきっと彼なりの愛情確認だったんだと思うと切なくて泣けてくる。

結局母性に敵うものはない。 

女と交わり自分も人も傷つけながら彷徨う生き様を理解し包んでくれるおばの存在は救いだった。

奥ゆかしい映画。

それぞれが運命には逆らえない悲しい最後を遂げるし、若松監督も公開前に事故死で亡くなってしまうし、こんなにも失ってしまう悲しみが伝わる映画は久しぶりで号泣。

高良さんは軽蔑に続き中上健次原作の映画。

中上氏の故郷である和歌山新宮市の路地を舞台にしたストーリー。 軽蔑の高良さんも素晴らしかったけど、この映画では色気はもちろんどこか切ない虚無感が滲み出ていて素晴らしかった。  

ちなみに軽蔑は中上氏の遺作。

高良さんは方言のある役のほうが好きだな。
軽蔑に続き和装がはまりすぎて潤いすぎた、、

本人は役がきつかったみたいだけど、吸い寄せられる美貌と肉体美どこか寂しい節目がちな存在感。性と生の狭間を生き抜く高良さんの半蔵は素晴らしかった。

雄大な水と山と坂道の街並みと三味線と民謡も心地よい。 やっぱり自分は日本人だなって思う。

ロケ地にもいつか行ってみたくなった。


良い映画だった。 ありがとう。
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