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偽りなき者のtakaeのレビュー・感想・評価

偽りなき者(2012年製作の映画)
4.0
これはもう本当に辛すぎて胸糞悪すぎて、観ているうちに身体中が何とも嫌な気持ちで侵食されているような気がして途中で何度も停止しながら観てました。

マッツ演じるルーカス、離婚して息子とも離れて一人暮らし。教師の職を失い、今は幼稚園で働いています。
そして、その幼稚園に通う親友の娘がついた嘘が、ルーカスをこれでもかというくらいどん底に突き落とします。少女のついた嘘により、子どもに性的虐待をしていた変態呼ばわりされてしまうルーカス。

もうね、この辺りから胸糞悪くて仕方なかった。
「子どもは決して嘘をつかない」
こう思いたい気持ちは分からなくもない。でも、子どもだって嘘はつくし、現実と空想が入り交じって実際にはなかったこともあったような気がしちゃったりする。
子どもながらに、これは言わない方がいいと判断して不都合なことは言わずに大人に言われた通りのことを話したり、聞かれたことに頷いたりもする。

一番はじめに少女の話を聞き、勝手な思い込みでルーカスを変態呼ばわりして本人の話もろくに聞かずに保護者に吹聴した園長ババアよ。さらにこの園長ババアが頼ったカウンセラー?専門家?のジジイ(専門家と呼ぶにはその対応があまりにもお粗末すぎる)の誘導尋問には本当に吐き気がしました。この2人の対応がもっとまともならこんなことにはならなかった。

確かに子どもが本当のことを言っている可能性もあり、最初から嘘だと決めつけるのは良くないけど、これはまるで本人不在の魔女狩りと同じだと思います。人の人生がかかってることなのに、こんなやり方ってない。

ルーカスが子どもに性的虐待をしたという噂が広まってからの周囲の対応、それはもう酷いものでした。
コミュニティの結束、仲間同士の絆の強さが裏目に出たということもあるけど、そもそも正義って何だろう?スーパーでの買い物を拒否したり、窓に石を投げること?
息子も本当に可哀想でした。仲間の一人が変わらずサポートしてくれたのがせめてもの救いだった。

このお話は最後の最後まで観ているこちらに色々なことを突き付けてきます。ラスト、ルーカスが体験したことには言葉を失いました。
誰の立場に立って考えるかで色々な見方ができるかもしれませんが、こういうことは自分の身近で絶対に起こらないとも言えない。人の正義や善意は、時に誰かを傷つけることにもなるんだなと思うと凄く怖くなりました。

カンヌで最優秀男優賞を受賞したマッツの演技は素晴らしかった。辛かったけど観て良かったです。
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