ジャンキーの意見

地獄でなぜ悪いのジャンキーの意見のレビュー・感想・評価

地獄でなぜ悪い(2013年製作の映画)
4.3
中高生の頃良く行ってた今はなき木更津の映画館(木更津セントラルシネマ)がロケに使われていた。学校サボって行ったりとかいろいろ思い出深い。ボウリング場とゲーセンが一緒にあるようなところで、でも決して活気のあるスポットというわけではなく、週末に見に行っても客入りはまばらだった。上映中は上のフロアのボーリングの球の転がる音が漏れてきたり、椅子の座り心地も全然よくなくて、2本立てとか見ると相当ケツが痛くなってしまうような、昭和の遺物のような映画館だった。そんな10代のころの思い出の場所が、この映画のラスト、妄想のなかの映画の上映が終わり満員御礼でスタンディングオベーションが起きるというシーンに使われていて、なぜだか思わずぐっときてしまった。90年代には映画館の客足は減り、あの昭和の映画館が満員になっている光景など、僕には見たくても決して見ることはできなかったからだ。これはまったく特殊な個人的な感傷にはすぎないのだけれど、つまり、木更津のあそこのみならずそれぞれの町のそういうシネコン以前の昭和の映画館の雰囲気で映画とともに育った人ならこの作品の映画愛には少なからず琴線に触れるものがあるだろう、ということだ。深作警察署にマキノ通りだったりいろいろオマージュはあるけど、いや、もはやオマージュしかなくて陳腐さスレスレのところだけれども、ヤクザ映画の死滅を愚直にメタ化した試みと、問答無用のスピード感はやはり唯一無二のものとして評価されてしかるべきではないだろうか。