柚子

そして父になるの柚子のレビュー・感想・評価

そして父になる(2013年製作の映画)
3.8
出生時に子供を取り違えられた二組の家族。
一方は一流企業に勤め都内の高級住宅に住む、絵に描いたような裕福なエリート一家。
また一方は群馬の商店街で小さな電気屋を営む子沢山一家。
この対比が絶妙で、物語に深みを増していく。

ミッションと称して6歳の息子を互いの家に泊まらせ、徐々に本当の息子を家族として迎える準備を進めていく。
たかが6年といえど、育った環境の違いは大きく2人の子供と両親は困惑する。

ふと、親って何だろう?という疑問が湧く。
血縁関係があること?
食事を与え、世話をすること?
戸籍上親として認められること?
妊娠・出産を経験することのない男性にとっては余計に自分が確かにその子供の父親であるという実感を得にくいのかもしれない。
両家とも、当事者であるにも拘らず父親がどこか他人事のように感じられたのも、そのせいもきっとあるのだと思う。

映画の中では子供たちの所在の決着がひとまずは付くけれど、家庭環境の大きく違う2つの家族において今現在の幸せか、あるいは将来的に見た幸せ、どちらが最善の選択なのか。
そもそも経済的に裕福な暮らしだけが幸せといえるのだろうか、という問いを残していると思う。
こうあるべきだという親としての正解はないからこそ、家族というのは難しく愛おしいのだろう。
柚子

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