囚人13号

ザ・デッド/「ダブリン市民」よりの囚人13号のレビュー・感想・評価

4.0
無抑揚な語り口では隠蔽しきれない死の香り漂う遺作。

恒例のホームパーティに招待された人々が楽しむふりをするだけの室内劇なのに、一度たりとも視線が合わない恐怖というか、互いの存在を認識していないような狂気。
一瞬交錯すると何かやましい事を見透かされているように男女は素早く目を逸らし、幸福な夫婦が見つめ合う様子は老婆が中央に割り込むことで二人を後景へ追いやってしまう。

何より終盤、ある馬車が通過するリフィー河(?)の尋常ではない煌めき具合はもう冥界としか思えない、20世紀初頭の夜には考えられない光量を受け止め反射している。

ハメットを原作にサンフランシスコ上空で幕を開けたヒューストンのキャリアは、ジョイスによるアイルランドの猛吹雪の中閉じられた。
皆様どうか良いお年を。
囚人13号

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