あでゆ

凶悪のあでゆのレビュー・感想・評価

凶悪(2013年製作の映画)
4.3
ある日、ジャーナリストの藤井は、死刑囚の須藤が書いた手紙を持って刑務所に面会に訪れる。須藤の話の内容は、自らの余罪を告白すると同時に、仲間内では先生と呼ばれていた全ての事件の首謀者である男の罪を告発する衝撃的なものだった。藤井は上司の忠告も無視して事件にのめり込み始める。

冒頭から目を背けたくなるような辛い描写にノックアウトされる。本当に怖いのは、特に野望もなくただ生活とちょっとした遊びのために人を殺すような人間たちなのかもしれない。それをピエール瀧とリリー・フランキーのゾットするような演技が教えてくれる。

ピエール瀧はかなり一貫している。自分ではできない範囲をカバーしてくれる人間に丁寧に付き従って、慕ってみたりするんだけど、あくまでもそれは利用しているに過ぎないというのはリリー・フランキーに対しても山田孝之に対しても神に対しても同じ。これが見えてくるととても面白い。

一方で山田孝之には一切共感ができなくて、事件を追うあまり家庭や周囲を顧みることができず、その凶悪性に感染してしまうというのはよくわかるんだけど、とはいえ奥さん殴られてんのみて何もしないとかありえんだろそれはとか思ってしまった。

直接顔を映さずにボウっと鏡越しに薄気味悪い表情を捉えたり、過去と未来を直接つないでしまってもはや現実味がなさすぎて一種のファンタジーのように見せてしまう最初のリリー・フランキーの殺人など演出が見事。
カメラワークも心情に応じてグラグラと揺らしてみたり、必要な時はワンカットでつなぐなどお手本のような出来。とはいえ必ずしも教科書的ではなく、不安定な劇伴や、中盤は完全に回想に振り切る大胆な構成を作っている。
あと被害者もなんというか、本当にいそうな汚いモブ感がすごかった。
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