イェスタデイワンスモア

ふたりのイームズ 建築家チャールズと画家レイのイェスタデイワンスモアのネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

Technique:
映画の構成は巧妙かつ革新的か?観ていて面白い映画か?特筆すべき映画美術の質と革新性はあるか?
→ 0.8/1.5
ドキュメンタリーの手法として特筆すべき革新性はないが、観ていて引き込まれる映画であった。イームズの遊び心とウィットに富んだ視覚的エレメントを存分に活かした映像造りが素晴らしい。映画前半と最後部での桜の映像の使い方が洒落ていると感じた。


Narrative:
意外な結論があるか?価値ある感情的インパクトを残すか?伏線設計などは緻密か?
→ 1.3/1.5
椅子好き標榜するものの、今まで触れてこなかったイームズ夫妻を知る最高のイントロダクションであった。夫妻の才能のコラボ、イームズチェアやケーススタディ8の説明はもとより、映画後半で触れられていた視覚作家としての一面が意外な展開であった。特にIBMとの紳士協定によるプロジェクト、冷戦プロパガンダへの関わり(これが印象深い)、そしてニューヨーク博のプロジェクトは掘り下げて学ぶ価値があるだろう。「情報時代のパイオニア」という映画最後部の指摘は的確なものである。また、イームズのデザイン過程は、まさに「最高の遊び人」とも言えるもので、見ているこちら側までもがエキサイトする楽しいプロセスである。将来の働き方の参考に是非ともしたい。また、美術史におけるフェミニズムの転換期に生きたレイの人生も巧妙に織り込まれていて、示唆に富む良作であった。


Positionality
映画は新しい視点や知見を提供するものか?公開当時と現在にどのような意味を持つか?
→1.3/1.5
刺激的な知識に富んだ映画である。学べるポイントを要約して挙げると...

・イームズ夫妻の「真面目に遊ぶ」人生思考、お互いの才能を支え合う夫妻のコラボレーション、それを最大限に発揮するための組織のカルチャー(とその副作用的諸問題)
・チャールズ・イームズの情報時代における視覚言語のパイオニアとしての一面。
・美術史におけるフェミニズムの転換期

上の二点のイームズのアイディアは、Googleの社風やパワポに観察できるように、現在の常識に発展しつつある。この映画を観て意外なところに源流を見つけられたと思う。シリコンバレーのロジックが支配的になってくる最近の時世において、それを破壊して再構築するためには、そのオリジナルを知る必要がある。ポストシリコンバレーロジックのヒントはここにある。

あとは、最初と最後に紹介されてるイームズ夫妻の言葉は、金言だなと思う。

“An artist is a title that you earn. And it’s a little embarrassing to hear people refer themselves as artists.”

“We don’t do art, we solve problems”


Bonus
・前々から気になっていたイームズ夫妻を学べて満足感が非常に高いこと、そして働き方やプレゼンなどの最高部類のインスピレーションになるであろうという見込みがあることから...
→0.3/0.5