キミシマユウキ

許されざる者のキミシマユウキのレビュー・感想・評価

許されざる者(2013年製作の映画)
3.9
明治時代初期の蝦夷地。かつて"人斬り十兵衛"と呼ばれた最強の男も今は落ち着いて農夫として慎ましく暮らしていたが、ある日依頼を受けて……

『悪人』『フラガール』の
!!李相日監督!!
によるサムライ映画。
クリントイーストウッド監督
『許されざる者(1992)』
のリメイク。
同監督の公開された新作『怒り』に向けて予習シリーズ。

人はどこまで許されるのか……

元となるオリジナルの脚本は大きく変えずに尊重しつつ、明治時代初期の日本を舞台に替えて上手くはめ込んだ意外な佳作。
特に注目するべきは北海道オールロケで撮影したことで実現された雄大な自然の描写。
とにかくスケールが大きく、蝦夷地の自然が険しくも美しい。遠くから馬に乗ってる人を映すだけで充分絵になってしまう素晴らしさ。これは映画館で観るべきだったか。
人斬りと恐れられた過去を捨て真っ直ぐに生きようとした男は何故、もう1度刀を握ろうとしたのか…
明治初期という時代設定もあり、時に置いてかれた武士達の切なさ、刀<魂>を捨てきれない想いがあいまってより楽しめた。

俳優陣の演技も素晴らしい。
主演の十兵衛役に渡辺謙。
イーストウッドより今作に限っては好きだったかもしれない!!
多くは語らず表情で魅せる男、日本アカデミー賞受賞も納得だ。
ラストに写る彼の顔は何を想っていたのか…
旧友の馬場役には柄本明。
彼も良い。モーガンフリーマン立ち位置だがもう少し飄々とした好々爺になっていて好きだ。
そして何よりも印象に残ったのは警察署長役の佐藤浩市。
自分の見た彼の作品の中では最も悪人な役…のはずなのに、めちゃくちゃかっこいい。普通の人が読んだらクサイ台詞も彼が放つと何故か重みと威厳が増す!!
振り切った悪役が見事にハマっていた。
他にも若き気鋭柳楽優弥や、意外とハマリ役の小池栄子、國村隼人などなど豪華キャスト出まくりで鼻血ものだ。

オリジナルと比べると人によっては見劣りしてしまうかもしれないが、個人的には珍しくリメイクで成功した良い作品だと思う。
渡辺謙も出演している新作『怒り』がより楽しみになった…

「地獄で待ってろ」

日本の西部劇っぽい映画が見たい方、オリジナル『許されざる者』が好きな方、そして『怒り』の前に復讐しておきたい方にはオススメの作品。