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はじまりのみちのoikawaのレビュー・感想・評価

はじまりのみち(2013年製作の映画)
4.0
良い映画を観た。

第二次大戦を経験し、昭和を生きた実在の映画監督「木下惠介」を加瀬亮が演じる。

戦時中、映画製作も政府の管理下にある中で自分の思うような映画が撮れないことから製作会社に辞表を出す木下惠介。

無職のまま家族で疎開することになるが、病床の母の体を労ってバスではなくリヤカーに乗せて静かに運びたいと言い張る。

頑固さに折れ、惠介の兄(ユースケサンタマリア)が同行し、荷物持ちに便利屋(濱田岳)を雇って、夜中に疎開先へ発つことになる。


…つまり、加瀬亮、ユースケサンタマリア、濱田岳、男3人(お母さんもいるけど)のロードムービーなんですよ。こんなの絶対良いでしょ。

本筋は本当にそれだけ。すごくシンプル。道中の兄や便利屋とのやり取りや、偶然出会う風景、人々との関わりによって、少しずつ、主人公の中にある、映画製作や日本の未来そのものへの諦念が解れていく様子が素朴に描かれている。

中でも良かったのが、濱田岳との河原でのシーン。これは、すごく良かったから実際に観て欲しい。

人の心を動かしたり、言葉で人を助けようとすると、相手のことをよく知らなきゃいけないと思い込んでしまうし、それも間違っていないのだろうけど。
ただ、主人公のことを何も知らない便利屋が偶然ぽつりぽつりと話し出した「映画」の話題によって、木下惠介が映画への情熱を取り戻すきっかけになるこのシーンには、人の温度のある言葉は関係性や深さを超えてちゃんと人に届くんだな、と思わせてくれた。


不満点を挙げるとすれば、木下惠介の作品(映像)が結構そのまま長い尺で差し込まれるのが…。んー、もうちょっと見せ方があったんじゃないかなーと。
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