切り返しショット、マスターショット等、基本的映画文法を臨界点まで高めたマルコ・ベロッキオにはもう畏怖の念を抱くことさえ憚れる。
また、彼は人物の移動を、画面の奥行きではなく、過ぎ去る横向きの移動のみで表現する。
この映画の面白さとしては、劇中劇的な「パフォーマンス」を通して人物たちの情動が現れていることを挙げなければならない。具体的には、ある父親の議員辞職宣言の練習、ある息子の劇役者としてのオーディションの練習、そして擬似的カトリック教徒としてのイザベル・ユペールの、神を前にした叫びにも似た祈りのことである。
そして、様々な場面に立ち現れるテレビの映像=異世界の闖入がこの作品に更なる奥行きを与えている。