千年女優

眠れる美女の千年女優のレビュー・感想・評価

眠れる美女(2012年製作の映画)
3.5
20年近く眠り続ける女性エルアーナ・エングラーロの安楽死を巡って世論を二分する大論争の起こるイタリア。世論が揺れ動く中、安楽死支持派議員で妻の死に関して娘とわだかまるウリアーノ、植物状態の娘を巡って家族で意見が対立するフランス人女優ディビナ、自殺志願の患者と向き合う医師パッリドら市民の姿を描いたドラマ映画です。

後にパルム・ドール・ドヌールを獲得するベテラン監督マルコ・ベロッキオによる2012年公開のイタリア映画で、父親が繰り返し裁判所に延命中止を訴えたためカトリックの総本山バチカンや時の首相ベルルスコーニを巻き込んで論争を起こした実在の出来事を背景にした物語が観客の心を打ちベネチア国際映画祭でも高い評価を獲得しました。

実在の出来事はあくまでバックグラウンドに留め、いずれも「自死」をテーマにしながら全く目線の異なる物語を展開させて奥行きを演出します。群像劇としてややぎこちないところはありますが、「安楽死を選んだ」家族と「安楽死を選ばなかった」家族そして「自殺」という異なる観点を提示することで答えの出ぬ禅問答へと誘う一作です。
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