Jonayama

インポッシブルのJonayamaのレビュー・感想・評価

インポッシブル(2012年製作の映画)
4.6
『永遠のこどもたち』やのちに『怪物はささやく』、『ジュラシック・ワールド 炎の王国』を監督し今年はドラマ版『ロードオブ・ザ・リング』も手がけるなどペースはゆっくりだが確実にステップアップしているフアン・アントニオ・バヨナが2012年に監督した災害モノ。

休暇旅行中、滞在先でスマトラ沖地震による津波に巻き込まれ散り散りになった一家が阿鼻叫喚の地獄のような被災地を生き延び、再び集うまでの過程を描いたスペイン人一家の実話をベースにした人間ドラマともいえる映画だ。


どこか不穏な予感を感じつつも美しいリゾート地ではしゃぐ導入部分から一転して始まる被災シーンはかなりのリアリティと容赦ない描写が続きとてもしんどい。。
過酷な被災地の描写はセットだけでなく当然CGも使っているのだろうが明らかに実物は使えない津波以外はどこまでがCGなのか判別しにくく本当に被災地で撮影したかのような(もちろんありえないが)津波に蹂躙されたカオラックの凄惨さに胸が痛くなる…

本作はメインキャストにナオミ・ワッツやユアン・マクレガーを起用し製作費もAAAクラスではないにしろそれなりに費やされているが現実の災害をモチーフにしているゆえかエンターテイメント性を重視せずとにかく過酷で悲痛なテイストが全体を覆った災害モノなので撮影された映画だと分かっていても身震いするような恐ろしさが襲い、固唾を飲んで主人公たちの家族を捜し生きようともがく様を見守りつづける113分なので観終わった後はどっと疲れる。
ズタボロになりながらも懸命にもがくナオミの演技とユアンの嗚咽がとにかく記憶にこびりつく。。


ややネタバレになるが一家はなんとか全員助かるのでそこだけが救いではあるものの、助けられなかった人たちや未だ現地で苦しむ人々を想い涙しながらヘリで救出される一家を映すラストシーンには皆やるせない思いになるだろう。

撮影、役者、音楽、そして脚本など多くの点がとても優れている作品なので個人的にはとても気に入った。素晴らしい作品だ。
前述したようにエンタメ性を重視しないしんどい映画なので何度も観ようとは思わないが傑作なのは間違いない。



余談だが本作ではトム・ホランドが息子役として映画デビューを飾っている。
クレジットでは3番手だが実質の主役は彼で子役の初映画出演とは思えないほど素晴らしい演技を披露してくれる。
Jonayama

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